たいらじゅんが日記を書くってよ

名古屋在住ミュージシャンの日記

息子が生まれた最初の夜

誕生

 

前回、このブログでは息子について少し触れた。

 

jyunbo.hatenablog.com

 

先日、久しぶりに「元気か?」と、息子にLINEを送ってみた。

 

今、息子は大阪で暮らしている。

沖縄を出て、初めての冬に困っていることはないか?

風邪ひいてないか?

仕事は順調か?

困り事はないか?

 

質問だらけの親父に面倒くさかっただろう笑

 

息子からはやっぱり、寒くてやばいみたいな返信が来たのだけど、一本の動画も送られてきた。

 

息子が職場で訓練をしている様子の動画だった。

 

前回も書いたけど、息子は大阪のとある企業に勤めている。

ミスが命にも直結する可能性のある、そんな危険な仕事なのは知っていたけど、初めて息子が訓練をしている様子を納めた動画をみて、改めて心配でたまらなくなった。

 

同時に「あ~、、、こんなに立派になったんだな…。」という、何とも言えない感情にも襲われた。

 

なんか、泣けてきた。

 

 

ちょうど20年前の夏。

僕は、所属していた“琉球チムドン楽団”を脱退して、当時の嫁さんと新しい生活を始めていた。

 

蝉の声に包まれた、それはそれは天気の良い朝のこと。

僕は、出産を間近に控える嫁さんの病室で少し会話をし、仕事へ向かった。

いつもと変わらない様子で、僕を送り出してくれたのだが・・・

 

後から知るのだけど、僕が病室を出てすぐに、陣痛が始まったらしい。

嫁さんはこの時「ん?もしかして…」という程度だったらしいけど、弱かった陣痛も、時間を追うごとに強くなっていったそうだ。

 

「生まれる」

 

その知らせが僕に届いたのは、お昼を過ぎてからだったと思う。

今思えば仕事も途中で退社して、すぐに病院に向かえば良かったと思うけど、この時の僕は、律儀にも定時までちゃんと働いたあとに、病院へ車を走らせた。

 

もう18時を過ぎていたのに、嫁さんはまだ陣痛と闘っていた。

詳しく分からないけど、陣痛ってこんなに長時間続くものなのでしょうか?

分娩室の隣の部屋で、寄せては返す波のように襲ってくる陣痛に苦しむ嫁さん。

あんなに激しく人が苦しむのを初めて見た僕は、声をかけて励ましてあげることぐらいしかできなかった。

 

僕が到着して2時間ぐらい経っただろうか。

助産師さんが様子を見に来て、ようやく「そろそろ生まれる。」と言って、分娩室へと移った。

出産の場には僕も立ち合うことになった。

 

「〇〇ちゃん!早く出てきて!」(息子の名前は決まっていた)

嫁さんは、10時間以上も続く痛みからか、やや取り乱していた様子だった。

 

「頭が見えてきたよ。がんばって。」

「はい、いきんで。」

 

助産師さんは、落ち着かせるように柔らかい声で嫁さんに声をかけていた。

僕は嫁さんの手を握り「がんばって」と、声をかけることぐらいしかできなかった。

 

そして、息子が生まれた。

 

僕はこの時気づかなかったのだけど、産まれてすぐに泣いていなかったことに、嫁さんは一瞬背筋が凍ったらしい。

でも、ちゃんと泣いていた。

元気に泣いていた。

そして身体が赤かった。

まさに「赤ちゃん」だ。

 

助産師さんは、ぐったりとした嫁さんの胸に、産まれたばかりの息子を近づけ「は~い、お母さんだよ。よく頑張りました~。」みたいなことを言っていた。

そのあと、立ち尽くしていた僕の胸に近づけて「は~いお父さんですよ~。おめでとうございます。」と言った。

 

その瞬間、僕は泣いてしまった。

 

違うな。

“泣いた”のではなくて、“自然と涙が溢れてきた”と言ったほうがしっくりくる。

泣いたわけではない。

言葉で言い表せないあの感情。

後にも先にも、この時にしか経験していない。

 

今までも、何度かこの時の感情を表現しようとしてるのだけど、言葉がみつからない。

感動なのか、安堵なのか、喜びなのか。

そのどれも違うような気がする。

 

もっともっと深いところにある“生命”というのを感じた瞬間だったのかもしれない。

 

 

義母と義妹はずっと付き添ってくれていたのだけど、出産からしばらく経って、僕の両親と義父が駆けつけた。

 

保育器の中の息子を、みんないつまでも見ていた。

義父は僕の背中をポンと叩いて「お疲れさま。これからが大変だと思うけど、頑張れよ。」と、そう言ってくれた。

 

息子が産まれた最初の夜は、そんな夜だった。

 

 

そうか、あれから20年になるんだな。

息子は目標にしていた仕事に就くことができた。

将来どうなりたいかという夢も聞いた。

これからはその“夢”を叶える物語が始まるんだな。

 

息子の名前には、僕の父親の名前の漢字を一字とって名付けた。

僕の父親は、母親が大病を患って大変な時期にも懸命に働いて、寄り添って、家族を守ってくれた。

実は僕とは血が繋がっていないのだけど、本当に尊敬している。

 

そんな尊敬する父親のように、何事にも前向きに頑張って、大切な人達を守れるような、そんな性格の息子ならきっとその夢を叶えられると、僕はそう確信している。

 

離れ離れで暮らしているけど、

見守っているさ。

たまには連絡もするよ。

次会えるのが楽しみだ。

20歳の誕生日を迎えたら、一緒にお酒でも飲めるといいな(笑)

 

今日の名古屋は雪だ。

大阪も寒いんだろうな。

風邪ひかないようにな。

 

がんばれよ。

 

 

おわり